飲食店の開業を考える。つくるのは「モノ」か「コト」か。
SENSIISTが運営する飲食ブランド、mode super smoothie。開業の話を始めるなら、まずメニューの前に立つ一人の視点から考えてみたい。
mode super smoothieを立ち上げるとき、私にはやってみたいことが二つありました。ひとつはもちろん、食べ物を売ること。もうひとつは、お店をきっかけに、そのまちの人たちが集える場所をつくることです。
食べ物が好きだし、果物の色がそのまま一杯になるスムージーは、見ていてかわいい。自分でこんなお店をやってみたい。個人的な動機は、わりとそのままです。一方で、普段は企業のマーケティングを考えている私が、わざわざ場所を持つのなら、そこで何ができるだろう。そのことは、立ち上げのときにずいぶん考えました。
スムージーなら、説明より先に会話が始まる
スムージーがいいなと思った理由のひとつは、伝わりやすさです。コーヒーにこだわるほど詳しくない。カフェは好きだけど、特徴を出すとなると競合が多すぎる。でもスムージーは、誰でも作れて、写真をとっても可愛い。世代関係なく誰でも飲める。「それ、何味?」と聞けるし、「ひと口飲んでみる?」と誰かにすすめることもできる。ブランドの考え方を知らなくても、一杯を楽しむのに困ることはありません。
「地域のコミュニティをつくりたい」と言うと、何かに参加してもらわなければいけない感じがします。でも、飲食店なら「飲みたいから来た」でいい。今日は買ってすぐ帰る。別の日には、注文を待つ間に近所の人と少し話す。どちらの過ごし方もできるのが、お店という場所のよさだと思っています。
私がつくりたかったのは、そのくらい気軽な接点でした。
「また飲みたい」と「またここに来たい」
おいしくて、また飲みたい。それは飲食店として、いちばん大事にしたいことです。そのうえで考えたのが、「この一杯を、なぜこのまちで売るんだろう」という問いでした。
たとえば、近所のお店の人と季節の一杯を考えるとします。店頭に二つの店名を並べれば、コラボ商品はできる。でも、そこでもう少し考えてみたい。飲んだ人が「今度は向こうのお店にも行ってみよう」と思えるだろうか。企画が終わったあとも、お互いのお客さんが行き来する理由は残るだろうか。同じ一杯をつくるにしても、そこまで考えると、相手の選び方も、店頭で伝えたい話も変わります。
「コト消費」という言葉を、私は大きなイベントや特別な体験だけの話だとは思っていません。一杯を買いに出たついでに、近所に好きなお店がもう一軒できた。そんな小さな出来事にも、自分がお金と時間を使う価値はある。むしろ日常のなかでは、そのほうが長く残ることもある気がします。
商品を考えるとき、その先の風景も考える
これは、飲食店に限った話ではありません。企業が新しい商品を出すときも、自治体が地域の魅力を発信するときも、「何を売るか」「何人に来てもらうか」は、比較的話しやすいテーマです。そこで、企画書にもう一行だけ足すとしたら、私はこう書きたいです。
これをきっかけに、誰と誰に、どんな関係が生まれてほしいか。
たとえば、地域の果物を都内で紹介する企画。試食して「おいしい」と思ってもらうのが目的なら、食べ頃の一切れをどう届けるかに力を注ぐ。産地を訪ねてもらいたいのなら、同じ試食の場でも、生産者と話せる時間や、次の収穫期に訪ねる方法まで用意したい。どちらが正しいかではなく、つくりたい関係が違えば、準備するものも違うということです。

これから飲食店を始める方には、メニューを考えるのと同じくらい、「この店ができたら、このまちの日常に何がひとつ増えるだろう」と想像する時間を持ってみてほしいです。私にとって、その問いを考える入口がスムージーでした。
SENSIISTでは、店舗や商品の立ち上げ、地域と連携した企画についてご相談を受けています。「売りたいものは決まっている。でも、この場所でやる意味をもう少し考えたい」。
そんなときは、ぜひいま考えていることを聞かせてください。
